社員インタビュー
百足 顕士MUKADE KENJI専務取締役/営業統括部長
今回favorのスタッフに話を聞くにあたって、共通して投げかけてみた質問がいくつかある。その一つが、「favorという会社を色に喩えたら、何色?」というもの。みな大人なためか“ブラック”と口走るスタッフはさすがにおらず、各人でさまざまな色を挙げてくれた。その中にあったのが“オレンジ”というもの。答えてくれたディレクターに「それはどうして?」と尋ねると、「favorのコーポレートカラーなんです」と教えてくれたのだが、ではなぜオレンジがコーポレートカラーなのかと聞かれても、それはわからないという。ただ、そこでこう付け加えもしたのだった百足さんに聞けば、わかるかもしれない。
実際、コーポレートカラーの意味を百足に尋ねると、「三島はもう覚えていないかもしれないんですが(笑) 」と前置きをしながら、「会社を立ち上げようと三島と話し合ったとき、暖色系はコミュニケーションを促すという心理学の研究があるという話題が出たんです。会議室の壁が暖色のほうが、寒色の部屋よりも討議が活性化するといったような。favorはコミュニケーションのための会社ですから、暖色の中でも印象が鮮やかなオレンジをテーマカラーにしようと、そのときに決めたんです」と即座に説明してくれたのだが、その口調は15年前のワンシーンの回想とは思えないほどに淀みがないのだ。それはおそらく、単に記憶力の問題というだけではない。物事を整理し、系統立てて理解しようとする、百足のパーソナリティーによるところが大きいのだろう。
「専務として“favorをこんな会社にしたい”といった夢はあるか?」と尋ねたときも、百足の答えは必要以上の気負いをまったく感じさせないものだった。
「このまま続けていければいいと、そう思います。特に大企業になる必要もない。そうなることがスタッフの幸福に直結するとも思えないし。ただ“このまま”というのは、かなり大変なことでもあるんです。ITの分野は技術の進化も早いだけに浮沈も激しい。その中で15年間、会社として存続し、長く信頼を寄せてくれているクライアントもいるということは、誇っていいことだと思うんです。その誇りをこれからも持ち続けることができれば、それで十分なのではないかなと思いますね」
そう、一言でいえば、百足は冷静なリアリストなのだろう。会社にはロマンチストが必要だ。しかし同時に、リアリストがいなければ会社にはならない。少なくともこうした百足の“リアル”が、favorを寒色ではなく暖色の空気の会社にしている一つの理由であることは、間違いないと思う。
(取材・文 /星野 智之)